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田島寛之 Hiroyuki Tajima
公認会計士 Certified Public Accountant
たじま国際会計事務所代表
ジャカルタ現地コンサル会社複数社の顧問会計士を務める
インドネシア税務資格Brevet A, B保有
Universitas Indonesia BIPA卒業
Universitas Lampung 非常勤講師

【公認会計士歴】
2013年:公認会計士試験合格
2014年:EY新日本有限責任監査法人
2017年:公認会計士登録
    公認会計士協会登録番号:37299
    たじま国際会計事務所 開業
2018年:Asia Alliance Partner(タイ)
2020年:PT.AAP Consulting Indonesia
2021年:取締役就任(2021-2023)

【法人税】会計と税務の関連性

本日の内容は税務を理解する上で非常に重要なものです。会計と税務の関連性(及び違い)については基礎的な話ではあるのですが理解されていない方も多く、またこの点を理解していないと税務に関する議論が的外れな方向に進んでしまう可能性も大いにある重要な論点です。丁寧に解説をさせて頂きますので、是非当記事をお読み頂き知識の確認をしていただけますと幸いでございます。

Hiroyuki Tajima

以下の様な人におすすめ!
・会計及び税務の目的の違いを理解したい方
・会計監査人(会計士)及び税務署の視点を理解したい方
・税務調整が入る背景(根拠や意図)を理解したい方

✔️本記事の信頼性(筆者紹介)

  • 田島 寛之 Hiroyuki Tajima
  • 日本国公認会計士 Certified Public Accountant (公認会計士協会登録番号:37299)
  • 国際税務コンサルティング経験豊富(2018年より2年間タイ、2020年より3年間インドネシア)
  • インドネシア税務資格Brevet AB保有
  • インドネシア現地コンサル会社複数社の顧問会計士を務める
  • Universitas Lampungにて非常勤講師を務める
もくじ

会計及び税務のスケジュール

まず、インドネシアにおける会計及び税務の全体像としてスケジュールを見ながら解説させて頂きます。

「会計」では年間を通して財務諸表を作成していき、完成後の財務諸表について外部会計監査人(公認会計士)による会計監査を受けることになります。会計監査は決算期末より4ヶ月以内に完了させる必要がございます。

Hiroyuki Tajima

財務諸表は会社の成績表の様なものですね。貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)などがございます。月次財務諸表の作成は法令で義務付けられている訳ではないですが、任意で作成されている会社が多いです。

「税務」では税金を計算して納税するのですが月次税務申告と年次税務申告がございます。月次税務申告は読んで字の如く、各会社は毎月申告納税致します。年次確定申告は決算期末期4ヶ月以内に申告納税が必要となります。

Hiroyuki Tajima

月次税務申告ではある程度見積要素を含んだ税金を申告納税しておりますので、もう1段階「年次確定申告」というものがあり、ここで税金額を確定させます。
※月次税務申告の細かなスケジュールについては別途記事で解説させて頂きます。

ここで注意しなければならないのは会計監査済財務諸表を基に税務計算を行わなければならないという点です。つまり、会計監査が終わらなければ年次確定申告が行えません。会計監査人ももちろんこの点は承知の上で会計監査を行なっておりますが、会社としては会計監査がスムーズに進む様、監査人からの依頼資料などをタイムリーに提供するなどの監査協力が重要となって参ります。

Hiroyuki Tajima

税務署へ事前に延長申請をすることにより2ヶ月間の猶予をもらうことも可能です。(つまり12月決算の場合、6月末まで延長可能。)

会計及び税務の目的の違い

「会計」では財務諸表を作成し、「税務」では税金計算、申告・納税を行うと申し上げました。より深掘りしていきますと、「会計」では財務諸表で会社の成績表を作成し、利害関係者が適切な意思決定を行えるようにすることが目的となります。

Hiroyuki Tajima

利害関係者というのは株主、債権者などをイメージして頂ければOKです。

「会計」は適切な成績表を作成し利害関係者を保護することが目的であり、「税務」では適切な税金計算を行い税務署に申告・納税を行うことが目的であり、両者の目的が異なるという点が非常に重要なポイントとなります。

Hiroyuki Tajima

目的の違いがどのように影響してくるのか、具体的に追って解説させて頂きます。

会計は財務諸表を作成するが、税務は?

「会計」では以下のような成績表(財務諸表)を作成致します。

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損益計算書(P/L)では収益-費用≡利益となり、貸借対照表(B/S)では資産-負債=純資産となります。

一方、「税務」においては「会計」の様に独立した諸表はなく、「会計」の損益計算書を基に税務調整を加えることで計算いたします。

税務では、収益-費用=利益といった表現ではなく、益金-損金=所得と表現します。収益と益金、費用と損金はほぼイコールの関係ですが、不一致項目もあります。この不一致項目を調整してあげることによって最終的に税務上の納税額が算出されます。

Hiroyuki Tajima

会計上と税務上で収益と益金、費用と損金、利益と所得の間に差異があるんですね。これを調整してあげることを税務調整といいます。この差異がなぜ生じるのか、この点が重要!後ほど解説いたします。

費用ではあるが損金ではないものを損金不算入といい、最も多い税務調整項目となります。領収書のない支出や交際費などが挙げられます。 たとえば、適切な証憑がない支出は会計上は費用として認識させられるが、税務上は損金としては認められないといったことになります。

Hiroyuki Tajima

上記の例だと、費用のうち10が損金不算入として税務調整されているんですね。

税務計算の具体例

実際に具体例を見ていきたいと思います。

  • A社の20××年の売上は200、それにかかるコストは130であった。
  • コストのうち領収書等の証憑がないコストが30あった。
  • 法人税率は22%。
Hiroyuki Tajima

証憑書類がないコスト30が損金不算入費用処理として税務調整され、課税所得が100と算出されていますね。これに税率を乗じて法人税額が確定致します。

税務調整が必要である理由(会計と税務で差異が生じる理由)

会計上の利益に税務調整を加えてあげることで、税務上の所得(課税所得)を計算し納税額を確定するのでした。ここで会計上の利益と税務上の所得の違いは、それぞれの目的の違いから来ております。会計では成績表の開示が目的です。この場合、利益を小さくする方が保守的な処理になるんですね。

Hiroyuki Tajima

利益を小さくすると成績は悪くなりますので、利益を小さくする処理が「会計」では保守的なんですね。

一方で税務は納税額の算出が目的です。所得を大きくする方が保守的な処理になるんです。

Hiroyuki Tajima

所得が大きくなると納税額は大きくなりますので、所得を大きくする方が「税務」では保守的な処理になります。

そのため、証拠書類が無い、つまり信ぴょう性が無い費用の取り扱いが会計と税務で変わってきます。会計上は費用に計上させますが、税務上は損金に認めないといった具合ですね。本来あるべき証拠書類が無いのであれば、会計も税務もどちらも会社にとって保守的、不利な方向の処理になる、といったイメージです。会計上は監査人がこれは費用だと指摘してくるけども、税務上は税務調査官がこれは損金じゃないと言ってくるんですね。

Hiroyuki Tajima

会社にとって有利不利の方向が「会計」と「税務」で逆になっているんです。ここがポイントです。

会計処理が適切でなかった場合の会計及び税務への影響は?

このように、「税務」は「会計」を基に計算しておりますので、基である会計処理が誤っていると納税額も誤ってしまうということになります。具体的には、会計処理が適切でなかった場合「会計」では財務諸表が適切な数値とならず利害関係者の意思決定を誤らせてしまう可能性がございます。「税務」では納税額が誤った額となり、税務署より追徴等を受けてしまう可能性がございます。

Hiroyuki Tajima

会計と税務はリンクしており会計記帳を適切に行わなければ納税額の計算も適切に行えないという事なんですね。

まとめ

「会計」と「税務」の関連性について本日は解説をさせて頂きました。最も重要なポイントは、それぞれの目的の違いから生じる会計上と税務上の差異が税務調整が必要である理由であるという点です。会計、税務の有利不利をイメージすることにより、今後さまざまな税務調整が必要となった際に調整内容や税務調整が入った要因を理解できます。以下に本日の内容をまとめておきましたのでご確認いただけますと幸いです。ご不明点等ございましたらお気軽に「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

もくじ