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田島寛之 Hiroyuki Tajima
公認会計士 Certified Public Accountant
たじま国際会計事務所代表
ジャカルタ現地コンサル会社複数社の顧問会計士を務める
インドネシア税務資格Brevet A, B保有
Universitas Indonesia BIPA卒業
Universitas Lampung 非常勤講師

【公認会計士歴】
2013年:公認会計士試験合格
2014年:EY新日本有限責任監査法人
2017年:公認会計士登録
    公認会計士協会登録番号:37299
    たじま国際会計事務所 開業
2018年:Asia Alliance Partner(タイ)
2020年:PT.AAP Consulting Indonesia
2021年:取締役就任(2021-2023)

【法人税】PPh22 輸入時前払所得税

今回はインドネシアの法人税の1つ、PPh22について解説をいたします。

PPh22は主に輸入事業に携わっておられる企業に該当する税金となります。こちら日本には無い独特の税金制度ですので、日本本社に質問されるケースもあるかと思います。本記事をお読みいただくことにより、当該税金に関し日本本社への説明も可能になりますので是非ご覧ください!

Hiroyuki Tajima

以前の記事で学んだ様に、PPh(ペーペーハー)は所得税のことで、PPh22は法人税に該当するんでしたね!

✔️本記事の信頼性(筆者紹介)

  • 田島 寛之 Hiroyuki Tajima
  • 日本国公認会計士 Certified Public Accountant (公認会計士協会登録番号:37299)
  • 2020年より3年間インドネシアにて会計税務コンサルティング会社を経営。
  • 国際税務コンサルティング経験豊富(2018年より2年間タイ、2020年より3年間インドネシア)
  • インドネシア税務資格Brevet AB保有。
  • インドネシア現地コンサル会社複数社の顧問会計士を務める。
  • Universitas Lampungにて非常勤講師を務める。
もくじ

PPh22 輸入時前払所得税とは?

PPh22は輸入通関時に納税が求められる税金です。「輸入した製品は将来利益を乗せて売却することになるであろうから、売却の際に生じる法人所得税を輸入時に事前に徴収します」といった制度です。事前に徴収されたPPh22は、年度末の法人税確定申告時に確定法人税額から前払法人税として控除されます。

Hiroyuki Tajima

輸入した段階で前もって将来の法人所得税を徴収する制度だから輸入時前払所得税という税金名なんですね。

輸入通関時にはPPh22の他、関税(BM)及び付加価値税(PPN)の支払いが生じます。

厳密には、輸入時前払所得税以外にも規定はあるのですが、一般的な日系企業が該当するケースは稀でございますためここでは解説を割愛させて頂きます。

PPh22の税率

PPh22の税率は輸入品目によって規定されておりますが、一般的には2.5%となります。課税対象は、CIF価格+関税の合計額となります。

Hiroyuki Tajima

輸入品を売却した際の利益(課税所得)は輸入額の2.5%と見積もって前払している様なものですね。2.5%を所得に乗じるのではなく輸入額に乗じるのにPPh22が所得税と言われるのは変だと思われるかもしれませんが、将来の所得税の見積もりを輸入額を用いて行っているということなんですね。

ほとんどのケースで適用税率は「CIF価格+関税」の2.5%となりますが、輸入品目によっては別途税率が定められているケースもございますため、都度顧問コンサル会社等に確認をされることをお勧め致します。

輸入ライセンス(API)を取得していない場合、適用税率は7.5%となります。

Hiroyuki Tajima

輸入ライセンスにはAPI-P(製造業)とAPI-U(非製造業)の2種類がございます。輸入品目によってはAPI以外にもライセンスが必要なケースもございますためご注意ください。

PPh22に関する問題点

このPPh22、実は非常に厄介な税金なのです。「法人税の前払であるから、確定申告時に相殺されるんでしょ?仮に相殺しきれなければ還付申請すればいいんじゃない?」と考えるかもしれません。しかし、インドネシアではこの還付申請をトリガーにほぼ100%税務調査が行われ、還付申請したのにも関わらずむしろ追徴されると言ったケースも多々生じます。外資企業に対する税務調査は非常に厳しく、安易に還付申請を行うべきではないと私は考えております。なるべく還付ポジションにならないように利益を出す(それができれば苦労しない、、、)ことがインドネシアでの一番の税務リスク対策と考えているほどです。つまりインドネシアでは税務調査の頻度を下げることが重要なのです。

Hiroyuki Tajima

100jutaくらいの還付額であれば、放棄する会社も多い印象ですね。
ちなみに前払法人税の還付可能額は翌年以降に繰り越すことはできません。繰越欠損金やVATの還付可能額とごっちゃにならない様に注意です!

繰越欠損金は5年間繰越可能。VATの過払いは翌年以降の売上VATと相殺可能。

この様なインドネシア税務の背景がある中で、前払額を増やしてしまうPPh22は還付ポジションを作る要因になりやすいという点で非常に厄介なのです。もう少し丁寧に解説しますと輸入する都度2.5%の前払いが生じます。これはその期に赤字であろうが輸入をすればPPh22は生じます。仮にその期に赤字であった場合この2.5%がまるまる過剰納税となり還付ポジションとなってしまいます。

例えば、CIF価格+関税の合計額1,000で輸入したケースを考えますと、

仕入額:1,000

PPh22:25(=1,000*2.5%)

現在法人税率が22%ですので、113.6(=25/22%)以上の利益(課税所得)を出さなければ、還付ポジションとなってしまいます。

粗利で113.6出せば良い訳ではなく販管費等を控除した後の利益額(課税所得)が113.6以上ないと還付ポジションになります。

Hiroyuki Tajima

本来、納税者のための還付申請制度であるにも関わらず、納税者の悩みの種となっているのは。。。還付ポジションで還付申請しない場合は、還付放棄としてB/S上の前払法人税を損金不算入費用処理するケースも多いです。

厳密には税制上、還付放棄という選択肢はなく、あくまで会社判断として損金不算入費用として処理するという選択肢もあるということです。

まとめ

PPh22は日本にはない税制度であり、インドネシアで輸入事業を行う企業にとっては非常に負担の大きな税金であります。そのため、輸入事業をインドネシアで行われる企業は税務リスクが高いことを認識された上で慎重に対応していく必要があると考えます。税務リスク以外にも輸入ライセンス等細かな規定(API以外にも)もあり、また規定も頻繁に改訂されますため情報収集を適時に行うことが重要となります。当該記事でもタイムリーに情報をキャッチアップし、情報提供できるよう努めさせて頂きますので何卒よろしくお願いいたします。ご不明点等ございましたらお気軽に「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。

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