皆様、デット・エクイティ・スワップ(DES)と聞いてピンときますでしょうか?本社から借り入れを行っている会社にとっては検討の余地がある手続となります。特に過少資本税制や増資と関連する手続となります。ぜひ当記事にて把握していただけますと幸いでございます。
以下の様な人におすすめ!
・インドネシアに赴任されて間もない方
・本社から借入金がある会社の駐在員の方
・過少資本税制の規制にかかりそうな会社の駐在員の方
✔️本記事の信頼性(筆者紹介)
- 田島 寛之 Hiroyuki Tajima
- 日本国公認会計士 Certified Public Accountant (公認会計士協会登録番号:37299)
- 国際税務コンサルティング経験豊富(2018年より2年間タイ、2020年より3年間インドネシア)
- インドネシア税務資格Brevet AB保有
- インドネシア現地コンサル会社複数社の顧問会計士を務める
- Universitas Lampungにて非常勤講師を務める
デット・エクイティ・スワップ(DES)とは
デット・エクイティ・スワップ(DES)とは、Debt(借入)をEquity(資本)にSwap(交換)する手続きとなります。この手続き自体はインドネシアのみならず日本にもございます。資金調達をしている会社からすると相手方の立場が貸主から株主に変わることになります。
仕訳としては以下の様になります。
資金調達側
(借方)借入金×× / (貸方)資本金××
資金提供側
(借方)子会社株式×× / (貸方)貸付金××
読んで字の如く、といった手続きですね。略称でDES(デス)と表現することが多いです。どういった際にこのDESが用いられるのか、次のコラムにて解説をさせて頂きます。
DESが用いられる主なケース
DESが用いられるケースとしては主に以下が挙げられます。
- 子会社の財政状況を改善させる目的:債務を資本に転換することで例えば債務超過を解消することができる。
- 過少資本税制回避目的:債務を資本に転換することで負債資本率を改善できる。
- 子会社清算前などに債務免除益回避目的:債務免除を行うと子会社側で債務免除益に対し法人税が発生する。
インドネシア子会社に対し、DESを用いるケースとしては上記2番目と3番目が多いかと思います。2番目の過少資本税制回避目的にはDESは非常に有効な手続きであります。インドネシアにおける過少資本税制では
過少資本税制、子会社清算前の債務免除益回避につきましては別記事にて解説をしておりますので是非ご参考ください。特に清算前の債務免除益回避については税務リスクが非常に高く、おすすめできません。
検討すべき事項
DESを行うにあたり下記につきましては検討がマストになると考えます。
- 税務リスク(日本及びインドネシア)
- 外資規制(持分比率)
1点目の税務リスクにつきまして、両当事者のリスクを検討する必要がございます。インドネシアサイドでは、債務免除益の不当な回避と見做されて税務指摘を受けるリスクや、スワップされる債務額と資本額に差があると見做され寄付金認定されるリスクがございます。債務免除益の不当な回避と見做されやすいケースとしては、子会社清算前のDES実施となります。実際この様な場合、債務免除益回避が目的かと思いますため反論も難しいです。また寄付金に見なされるケースとしては、貸主に割り当てられる株式評価がスワップ対象の貸付金の評価未満であった際でございます。評価額以上の金額での資本金払い込みを子会社は受けたことになるため、差額が益金認定されてしまいます。
2点目の外資規制ですが、業種によってインドネシアでは外資比率の上限を規定されております。日本本社からの借入金についてDESを行うことにより外資比率が高まり規制の上限を超えてしまうといったケースが起こり得ますので、この点十分ご注意ください。
まとめ
本日はデット・エクイティ・スワップ(DES)につきまして解説をさせて頂きました。特に過少資本税制回避に有効な手続きですので、過少資本税制にて借入利息が損金不算入となっている会社は是非ご検討をなさると良いかと思います。ご不明点等ございましたらお気軽に「お問い合わせフォーム」よりご連絡頂けますと幸いです。
最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。