繰越欠損金・過払法人税・過払VAT。これら法人の確定申告時に取り扱いについて意思決定が必要になる事項であるのですが、内容把握されておりますでしょうか?また、翌期以降に繰り越せるものとそうでないものがございます。法人意思決定上、非常に重要な論点となりますので是非当記事にて把握いただけますと幸いでございます。
以下の様な人におすすめ!
・会計税務初心者の方
・インドネシアに赴任されて間もない方
✔️本記事の信頼性(筆者紹介)
- 田島 寛之 Hiroyuki Tajima
- 日本国公認会計士 Certified Public Accountant (公認会計士協会登録番号:37299)
- 2020年より3年間インドネシアにて会計税務コンサルティング会社を経営。
- 国際税務コンサルティング経験豊富(2018年より2年間タイ、2020年より3年間インドネシア)
- インドネシア税務資格Brevet AB保有
- インドネシア現地コンサル会社複数社の顧問会計士を務める
- Universitas Lampungにて非常勤講師を務める
繰越欠損金・過払法人税・過払VATとは?
まずは簡単に繰越欠損金・過払法人税・過払VATについて解説をさせて頂きます。
■繰越欠損金
下記確定申告時の法人税計算過程となります。会計上の利益に税務調整を加味して課税所得を算出することになりますが、この課税所得(課税対象の所得。つまり税率を乗じる前)がマイナスであった場合、当該マイナスを翌期以降に繰り越すことができ向こう5年間の課税所得と相殺が可能であります。下記の例で言うと△20が繰越欠損金となります。
■過払法人税
過払法人税は繰越欠損金とは別物となります。期中に源泉徴収などで前払いされた法人税が確定申告時に計算された法人税額以上であった場合の過払い分が過払法人税となります。下記で言うとStep3の−10でございます。
■過払VAT
VATの申告納税額は以下のように計算されます。今回テーマとなっている過払VATとは売上VAT額を超えて支払った仕入VATであり、申告納税額がマイナスとなった場合の事象を指しております。
売上VAT=売上高×11%
仕入VAT=仕入額×11%
申告・納税額=売上VAT − 仕入VAT
翌期に繰り越せる事項と繰り越せない事項
結論から申しますと、繰越欠損金及び過払VATについては翌年以降に繰越が可能でございます。しかし、過払法人税については翌期以降に繰越ができず、過払法人税が発生した期に還付もしくは放棄を選択する必要がございます。
- 繰越欠損金:翌期以降5年間繰越が可能
- 過払VAT:翌期以降に繰越が可能。特に期限なし。
- 過払法人税:繰越不可。発生した期に還付もしくは放棄を選択する必要あり。
過払法人税について
素直に考えると過払法人税を還付申請することになるのですがインドネシアでは還付申請を行うとほぼ100%税務調査が入ることになります。インドネシアの税務調査は非常に厳しく、特に外資企業に対しては難癖とも取れるような強引な調整をしてくることも多い状況です。そのため、安易に還付申請を行うことは税務リスクという面で非常に危険であります。税務調査には1年間を要しますし、ほとんどの会社でコンサル会社に税務調査対応を外注することになりますため、これらの負担も考慮に入れた上で還付申請を行うか否かを判断することになります。
私の経験上、還付申請額が150jutaを超えてくると還付申請の決断をなさる会社が徐々に出てくる印象です。それ以下ですと泣く泣く放棄されているケースが多いかなと感じます。
まとめ
本日は、繰越欠損金・過払法人税・過払VATについて翌期に繰り越せる事項とそうでない事項を解説させて頂きました。過払法人税について翌期以降に繰り越せると勘違いしていると、大きく意思決定を誤ってしまうケースもございますのでご注意ください。ご不明点等ございましたらお気軽に「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。
最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。